家が古くなってきたり、家族構成やライフスタイルに大きな変化があったときに、多くの方が「建て替え」と「リフォーム」で迷われます。それぞれのメリットやデメリットを理解した上で、総合的に検討することが必要です。
この記事では、建て替えとリフォームを判断する際のポイントをご紹介します。
◆建て替えとリフォームの違い
建て替えとは、既存の建物を取り壊して、新たに基礎から建てることです。老朽化や建物の損傷が激しく、改築や修復に多くの費用がかかる場合は建て替えとなるケースが多いです。
ただし、建築基準法で定められた条件を満たしていない「再建築不可物件」に該当する場合は、建て替えることができません。また、建て替え時には、現行の建築基準法の条件を満たす必要があるため、現在よりも住宅サイズが小さくなってしまうことがあります。
一方、リフォームの定義は会社によってさまざまですが、一般的には、既存の建物や部屋を修理・修繕、改築、増築することです。似た言葉に「リノベーション」があり、施工範囲などでリフォームと使い分けられていることもありますが、明確な使い分けの定義はありません。リフォームは、建て替えと異なり、基礎などを活かし、既存の建物に手を加えることで、傷んでいる箇所を修復したり、新たな性能や機能を持たせたりすることができます。
◆得するのは建て替えか、リフォームか
建て替えとリフォームではどちらが得するのか、3つの観点からご紹介します。
◎工事費用の違い
工事費用は、工事内容や施工会社によって変わります。原材料や人件費の高騰など、時世の影響も受けます。原則的には、その時々で見積もりを取って、工事費を確認しなければなりません。
一般的には、既存住宅の生かせる部分を残すことで材料費や工賃のコストダウンが図れるリフォームの方が安価に抑えられます。
ただし、工事規模が大きくなるほど既存部分の再利用が減るため、リフォームと建て替えの費用差は小さくなります。条件次第では、建て替えた方が安く収まることもあり得ます。
◎諸費用の違い
一般的に、諸費用は建て替えのほうが高額になります。
【建て替えの代表的な諸費用】
・仮住まいの住居費
・引っ越し
・登記(表示登記、所有権保存登記、滅失登記)
・解体工事
・敷地調査費・測量費
・地盤調査・地盤補強
・屋外のガス・水道・電気工事
・外構工事
・住宅ローン諸費用(住宅ローンを利用する場合)
・火災保険・地震保険
・地鎮祭・上棟式費用(実施する場合)
【大規模リフォームの代表的な諸費用】
・仮住まい
・引っ越し
・登記(増築や減築などで床面積が変わる場合)
・一部解体工事
・ローン諸費用(ローンを利用する場合)
◎工期の違い
工期は、人件費や仮住まい費用に影響します。そのため、同じ工事内容でも短工期のほうがコストを下げられます。
・建て替え:4~7ヵ月
・大規模リフォーム:1~5ヵ月
なお、建て替えの場合は、必ず行政機関に「建築確認申請」を行わなければなりません。一般的な木造住宅の場合、この申請を通すのに1~3週間程度かかります。また、家屋や外構を解体する期間も、1~2週間必要です。そのため、工事開始から引っ越し完了までの期間は、リフォームより建て替えの方が相当に長くなります。
ちなみに、大規模リフォームでは仮住まいの費用を予算に組み込んでおくとよいでしょう。
◆建て替えのメリット・デメリット
【メリット】
建て替えの大きなメリットは、家を新築する場合とほぼ同様に、自由度の高い設計が可能であることでしょう。生活に合わせた間取りを選択することができ、キッチンやバス、トイレなども最新の設備での統一が可能です。
これまでに住んでいた住居を解体・撤去したのちに、土台から作り替えることもできます。耐震性能や断熱性能などをあらかじめ考慮した設計にすることで、安全で快適な暮らしを手に入れやすくなります。
また資金計画に関して、金利の低い住宅ローンを組みやすい点も大きなメリットといえます。
【デメリット】
建て替えの大きなデメリットは、コストが高いことでしょう。新たに住居を建てる費用だけでなく、解体費や廃材の破棄費がかかることに加え、新築工事の工数と手間、打ち合わせが必要であり、施工期間中の仮住まい家賃、引っ越し費用など、それらに応じてコストがかさみます。
また、建築基準法では「4m以上の幅の道路に2m以上接した土地でないと原則として再建築不可」と定められています。このように、土地の形状によっては建て替えができない点にも注意が必要です。
◆リフォームのメリット・デメリット
【メリット】
リフォームは、必要な部分だけを改築するため、予算が組みやすく、建て替えと比較してコストを抑えられます。さらに、耐震やバリアフリーを目的としたリフォームでは、減税される場合があります。
工期が短いメリットもあり、改築の規模によっては居住したままの工事も可能です。また建て替えと違って、基本は法律による制限がないとされています。
【デメリット】
リフォームは既存の骨組みを活用するため、完全に自由な設計はできず、間取りがある程度限定されてしまいます。さらに、土台をそのまま使うので、耐震構造の補強が簡単ではないこともデメリットといえるでしょう。
また、一般的には建て替えよりもコストを抑えられますが、現在の建物の劣化が激しい場合や大きく改築する場合など、大がかりな施工になるほど高額になったり、建て替えほど耐久年数が長くないため、リフォーム後も比較的短いサイクルでの補修工事が必要になる場合があります。
リフォームと建て替えで迷われたときは、まず家の現状を明らかにするところから始めましょう。参考にしてみてくださいね。