「省エネ住宅」というワードは耳にしたことがあっても、実際にどのような住宅なのかはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では省エネ住宅の基準や種類を解説します。
◆省エネ住宅とは
省エネ住宅とは、国が定める省エネ基準を満たしているエネルギー消費の少ない住宅のことです。従来の住宅と比べて断熱性や気密性が高く、防露や換気性能にも優れています。冬は室内の暖気が逃げにくくなり、夏は窓から入ってくる太陽熱をさえぎるため、快適に過ごしやすいのが特長です。
◆住宅における3つの省エネ性能
省エネ住宅の性能は大きく分けて「断熱」「日射遮蔽」「気密」の3つに分けられます。これらの性能がそろうことで、家庭で使用するエネルギー量を効率的に削減できます。
①断熱
断熱とは、室内外の熱を伝わりにくくすることをいいます。断熱性能の高い住宅では、冬は暖房で温められた空気を逃さず、室外の冷気から室内を守り、夏は室外の熱が室内に入りにくくなり、快適な室温を保ちます。そのため、冬は暖かく、夏は涼しい状態を維持できるようになります。
室内の熱が窓や壁の隙間を通してどのくらい外に逃げるのかを外皮全体で平均化した数値を「UA値」で表します。このUA値が低ければ低いほど、省エネ性能が高い高断熱の住宅となります。
②日射遮蔽
「日射」とは、太陽からの放射エネルギーのことです。暑い夏に室内に入り込む日射量を抑える性能を「日射遮蔽性能」といいます。
日射遮蔽性能が高い住宅では、日射による室内温度の上昇が抑えることができるので、少ないエネルギー量で冷房を使用できます。
住宅の日射遮蔽性能は「ηAC(イータ・エー・シー)値」で示され、このηAC値が低いほど、省エネ性能が高くなります。
③気密
住宅における気密性能は、住宅の隙間をできる限り減らし、外気の影響を受けにくくすることを指します。この隙間がどのくらいあるのか数値化したものが「C値」で、C値が低いほど気密性の高い住宅といえます。
気密性が高いと室内の温度や湿度をコントロールしやすくなるため、一年を通して比較的快適に過ごすことができます。
◆省エネ基準の評価指標
省エネ基準を満たしているかという評価に用いられるのが「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」です。
「断熱性能等級」は外気温が室内温度に与える影響の受けにくさを表し、2022年9月までは5段階の等級でしたが、2022年10月に等級6・7が新設されて7段階で評価されるようになりました。
なお、省エネ住宅の基準は等級4とされています。地域ごとに異なるUA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)が定められています。
「一次エネルギー消費量等級」は、基準値となるエネルギー消費量に対して設計上のエネルギー消費量がどれだけ下回っているかを表すBEIという数値で評価されます。等級は6段階あり、省エネ住宅の基準は等級4です。
一次エネルギーとは、石油・石炭・天然ガスなど加工されてないエネルギーのことです。実際に家庭で消費するのは電気や都市ガスなどの二次エネルギーですが、一次エネルギーに換算するとどれだけの消費量になっているのかを表すのが一次エネルギー消費量です。
◆省エネ住宅の種類
省エネ住宅は、いずれも地球環境に配慮し、CO₂の排出削減を目的とした住宅ですが、重視する部分や認定されるための条件は異なります。
ここでは、近年注目されている5つの省エネ住宅について紹介します。
①ZEH住宅
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称です。2050年脱炭素社会の実現を目指すため政府によって発足された、省エネ住宅の新しい評価基準です。
ZEH住宅は、高断熱・高気密などの設備を導入し、家庭で使用するエネルギー量を抑えつつ太陽光発電などの創エネ設備を利用して、エネルギーを作り出すことで年間の一次エネルギー消費量をゼロにしています。
ZEH基準は、家を建てる地域や建築条件により「Nearly ZEH」や「ZEH+」などがあります。
②LCCM住宅
LCCMは「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略称で、住宅を建築→居住→解体・処分する一連の流れの中で排出されるCO₂を削減する住宅のことです。
ZEH住宅と同様、年間の一次エネルギー消費量を概ねゼロにする概念ですが、基準はさらに厳しく「省エネ」「創エネ」だけでなく「長寿命」住宅であることがポイントです。
③長期優良住宅
長期優良住宅とは「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて、2009年6月に制定された、国の認定制度です。長期優良住宅は、これまでの「古くなったら壊して建てなおす」というスクラップ&ビルド型の家づくりではなく、長期に渡り住み続けられるストック型の家づくりが目的です。古い家を取り壊す際の廃棄物の量を抑えられるため、地球環境にも良い住宅です。
④認定低炭素住宅
低炭素住宅とは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を減らすための仕組みや設備を導入した住宅のことです。2012年に施行された「エコまち法」で定められた「低炭素建築物認定制度」の認定を受けた住宅を「認定低炭素住宅」といい、省エネに特化しているのが特長です。
省エネルギー基準を超える省エネルギー性能を備えていることや節水機器・HEMSの設置をしているなどの、低炭素化促進のための対策がとられていることが必須条件となります。
⑤スマートハウス
スマートハウスとは、太陽光発電で創り出したエネルギーを蓄電池にためて、IT技術の活用によってエネルギーを賢く使う省エネ住宅のことです。
ZEH住宅が「年間の一次エネルギー消費量を概ねゼロにする住宅」であるのに対して、スマートハウスは「自家発電で得た電力を、家庭内で賢く効率的に使う」のが目的です。
省エネ住宅は、人にも環境にもやさしい住まいです。参考にしてみてくださいね。