三階建て

準防火地域で木造3階建て住宅は建てられる?

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市街地においては、火災の危険を回避するために「防火地域」や「準防火地域」に指定されている地域があり、建築物の建築にさまざまな規制が存在します。そのため、防火地域や準防火地域で木造3階建て住宅の建築は可能なのか、疑問を持つ方も少なくないようです。

この記事では、準防火地域で木造3階建て住宅を建てる場合の建築規定について解説いたします。

 

 

準防火地域における住宅建築の規定

都市の安全と適切な発展を目指して制定された「都市計画法」では防火に関する規定も含まれており、市街地における火災の危険を回避するために「防火地域」と「準防火地域」が指定されています。

「防火地域」は火災が広がりやすく、特に厳しい防火対策が必要な地域と定められ、「準防火地域」は防火地域を囲むように指定されており、防火地域に準じて延焼を受けやすい地域と定められています。

 

  • 防火地域

3階建て以上、または延べ床面積が100㎡を超える建築物は、「耐火建築物」としなければなりません。その他の建物も耐火建築物または準耐火建築物としなければなりません。

 

  • 準防火地域

3階建て以上、または延べ床面積が500㎡を超える建築物は、「耐火建築物」または「準耐火建築物」としなければなりません。

 

なお、建築物が防火地域、準防火地域、無指定地域にまたがる場合は、建築物全体は防火上の制限の厳しい地域の規定に従います。

 

 

耐火建築物と準耐火建築物

  • 耐火建築物

耐火建築物とは、火災が起きても周囲に燃え広がらず、倒壊するほどの変形や損傷が起きないような建物のことを指します。つまり、鉄筋コンクリート造や耐火被覆(火災の熱から守るために、耐火や断熱性の高い材料で覆うこと)した鉄骨造が耐火建築物にあたります。これら鉄筋コンクリート造など、規定の耐火性能を有するものを耐火構造と言います。

また、火が燃え広がる部分(延焼の恐れがある部分)である外壁の開口部(玄関ドア・窓・換気扇など)に防火設備(防火戸となる網入りガラスなど)を設置します。

開口部となる扉や窓は重要で、閉鎖することによって、燃え広がったり、燃え移る火災を相当な時間止めておくことができます。このように延焼を遮断・防止できる鉄製の扉や網入りガラスの窓のことを防火戸といいます。

 

  • 準耐火建築物

準耐火建築物とは、主要構造部(防火の観点から建物を建築する際に骨格となる、壁・柱・床・梁・屋根または階段のことを指し、構造的に建築物を支えている部分を指す「構造耐力上主要な部分」とは異なります)を耐火建築物の構造に準じた耐火性能にした建物です。耐火建築物ではダメだった木造でも、主要構造部を耐火被覆することにより準耐火建築物になります(もちろん、鉄筋コンクリート造や鉄骨造でも大丈夫です)。木造のように耐火構造以外の構造で、耐火構造に準ずる規定の耐火性能を有するものを準耐火構造といいます。

また、耐火建築物と同じように、火が燃え広がる部分(延焼の恐れがある部分)である外壁の開口部(玄関ドア・窓・換気扇など)に防火設備(防火戸など)を設置します。

 

耐火構造または準耐火構造でない屋根は不燃材料で造る、もしくは葺(ふ)かなければなりません。不燃材料とは、コンクリート・れんが・瓦・石綿スレート・鉄鋼・アルミニウム・ガラス・しっくい、その他これらに類する建築材料で規定の不燃性(燃えにくさ)を有するものをいいます。

また、準耐火建築物を除く準防火地域内の木造建築物で、延焼の恐れのある部分の外壁や軒裏は、防火構造としなければならないとされています。

耐火建築物は、燃えにくい材料で建てなければならないため、一般的な建築費より高くなります。その分、建物を建てる際、一般的に隣地境界線から50cm離さなければならないところ、準防火地域内で耐火建築物を建てる場合は、隣地境界線に接して建てることができます。

 

 

準防火地域内における準耐火建築物の建ぺい率緩和

準防火地域内における木造3階建の建築物(延床面積1,500㎡以下)は耐火又は準耐火建築物とする必要がありますが、建築基準法改正により、準耐火建築物でも建ぺい率が10%緩和されるようになりました。例えば、建ぺい率60%のエリアならば、70%になり、特に狭小敷地においてはこの10%は大きな差になります。

 

例えば、敷地面積60㎡で建ぺい率60%、容積率200%の木造3階建を準防火地域に建てる場合、建ぺい率が10%アップすることで、60%だと15帖位のLDKだったものが、70%だと18.5帖位のLDKがプランニングできる可能性があるということです。ここ最近の準防火地域おける木造3階建の新築戸建は、この緩和を使って建築確認を取得する物件が増えてきています。

 

 

耐火構造物や準耐火構造物は火災保険が安くなる

 

防火地域や準防火地域では、耐火構造物または準耐火構造物を建てる場合が多く、厳しい基準を求められるため建築コストがかかりますが、一方で火災保険料が安くなるメリットもあります。

耐火構造物や準耐火構造物は火災に対する耐性が高く、火災が発生した場合の損害が少ないと保険会社から判断されるためです。

なお、火災保険の見積もりを依頼する際に、以下のような耐火性能が確認できる書類の提出を求められます。

 

・建築確認申請書(建物が建築基準法などを遵守しているか検査する際に提出する書類)

・ 設計仕様書(建物の構造や内装材などが記載された書類)

・設計図面

 

 

準防火地域でも3階建て住宅は建てられますが、こうした制約をクリアしなければなりません。

準防火地域で3階建て住宅3階建て住宅を建てる際は、同様の実績が豊富な施工会社に相談しながら慎重に進めましょう。