家づくり

新築住宅の断熱等級とは?等級の違いや高断熱住宅を建てるポイントを解説

Pocket
LINEで送る

住宅性能のなかでも近年、注目が集まっているのが「断熱性」です。断熱性の高さを表す「断熱等級」とはどのような指標なのでしょうか?

この記事では、断熱等級や高断熱住宅のポイントなどをご紹介します。

 

 

断熱等級とは?

断熱等級は正式には「断熱等性能等級」と言い、住宅の断熱性能がどのくらいかを示す指標です。国土交通省が定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にて明示されています。

断熱等級は2022年3月までは4が最高等級でしたが、2022年4月に等級5が、同年10月に等級6と7が新設されました。これは、気候変動問題の解決に向けて世界規模で取り組んでいる「2050年カーボンニュートラル」という目標を実現するための取り組みの1つ。住宅の断熱性能を上げることで排出する炭素量を減らし、将来的な脱炭素化を目指しています。

2024年現在、1~7の7段階の等級があり、断熱等級は、数字が大きければ大きいほど熱の出入りが少ない、つまり断熱性能が高いことを意味します。等級を満たすには、それぞれの基準を満たすように断熱材や開口部などの建材を選ぶ必要があります。

 

  • 等級7

断熱等級7は、断熱等級6とあわせて2022年10月に新設された、HEAT20のグレードがさらに高いG3レベルの基準を満たす断熱性能を示します。

HEAT20は、「環境負荷の低減」「高品質で安心安全」な住宅を普及させるために、居住空間の温熱環境やエネルギー性能を図る技術開発、研究調査を行う目的で設立されました。

HEAT20はG1・G2・G3の3つの基準があり、G3が最高クラスの断熱基準です。G3はHEAT20の中では最も厳しく、北海道基準のG2よりも高い断熱性能で、ドイツのパッシブ住宅を目指した性能となり、真冬に暖房なしでも室内の温度がおおむね15℃を下まわらない断熱性能の確保が求められます。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね40%削減可能なレベルの性能です。

なお、日本列島は南北に長いため、最南の沖縄と最北の北海道では気温が大きく異なり、この基準をクリアするための断熱性能も異なります。

 

※HEAT20とは?

2009年発足の「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称で、より快適に暮らすための断熱性能の基準値(主にUA値)のグレードをZEH水準よりも厳しいG1~G3として定めています。

 

  • 等級6

2022年10月に新設された、HEAT20のG2レベルの基準を満たす断熱性能を示します。G2は、真冬に暖房なしでも室内の温度がおおむね13℃を下まわらない断熱性能の確保が求められます。暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベルの性能です。

 

  • 等級5

2022年4月1日施行され、「ZEH(ゼッチ)基準」相当となっています。ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のことで、エネルギー収支をゼロ以下にする家のことです。断熱材や窓ガラスなどは、断熱等性能等級4以上に高いレベルの断熱が必要となります。

2030年以降は、すべての新築住宅に断熱等級5への適合が義務づけられることが決まっています。

 

  • 等級4

1999年制定。「次世代省エネ基準」といわれ、壁や天井だけでなく、それまで基準が定められていなかった窓や玄関ドアなど開口部についても断熱を求められるようになりました。

次世代省エネ基準では、2025年以降は、すべての新築住宅に断熱等級4への適合が義務づけられることが決まっており、今後住宅建築時には最低基準となる等級です。

 

  • 等級3

1992年制定。通称「新省エネ基準」。一定レベルの省エネ性能を確保します。

 

  • 等級2

1980年制定。40年前の基準なので省エネのレベルは低いです。

 

  • 等級1

上記以外

 

 

2025年以降に新築する住宅では、断熱等級4以上、2030年には等級5以上が義務化されます。【フラット35】を借りるには、断熱等級4以上やエネルギー消費基準をクリアしなければいけないなど、すでに断熱等級は4がスタンダードの扱いとなっているのが現状です。

 

 

断熱等級が高い家のメリット

「断熱性能」の高さに基づいて分類される断熱等級ですが、断熱等級を高めることで実感できるポイントは主に4つあります。

 

①快適な室温を保ちやすくなる

断熱等級は、高くすればするほど熱の出入りが少なくなります。外気の影響を受けにくいため、冬は暖かく、夏は涼しい室内環境で過ごせます。また、エアコンを効率的に使用できるので、吹き抜けや高天井の間取りでも、快適な暖かさ・涼しさを保ちやすくなります。

 

②ヒートショックリスクを低減する

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく上下し、心筋梗塞や脳卒中などが起こることを指します。例えば暖房であたたかくなったリビングから寒い廊下やトイレに移動したときなどに、ヒートショックが起こるリスクがあり、とくに血管の収縮が弱くなる高齢者には危険です。家の断熱性能を高めると家の中の温度変化が小さくなり、ヒートショックリスクを低減できます。

 

③光熱費を抑えられる

断熱性能が高まると、一度快適な温度になればそこから変化しにくくなります。そのため暖房の温度を高くしたり、冷房の温度を低くしたりしなくても部屋の温度を快適に保ちやすくなり、結果的に光熱費を抑えられるのもメリットです。

 

④補助金、ローン金利やローン控除の優遇がある

2023年現在では、国が住宅の省エネに力を入れていることから、断熱等級が高い家を建てるときにはさまざまな補助金制度が用意されています。それらを利用することで、費用を抑えて高断熱の家を建てることが可能です。

また、省エネ性能が高い家については、住宅ローンの金利が優遇されるケースもあります。住宅ローン控除についても、省エネ基準を満たす住宅は満たさない住宅よりも借入限度額の上限額が高くなるなど、優遇措置が受けられます。

 

 

断熱等級が高い住宅は住みやすい一方で、建築コストが高くなるといったデメリットもあります。新築を建てる予定の方は、住宅性能と費用のバランスをみながら住宅仕様を検討しましょう。