注文住宅を建てる際に、建物が地震にどのくらい強いかを示す指標の一つとして「耐震等級」があります。
耐震等級ごとの安全性や、注文住宅建築時に備えたい耐震等級レベルについて解説します。
◆耐震とは
耐震は、建物を強くすることで地震の揺れに耐えようとする構造です。壁に筋かい(柱と柱の間に斜めにいれる補強材)を入れたり、部材の接合部を金具で補強したりして、地震に耐えられる構造にします。
例えば「耐力壁」は建物に対して横に揺れる力を支える役割があり、特に木造住宅での耐震に不可欠な要素です。壁の強さを表す壁倍率を高めることで、より横揺れに強い居住空間をつくれます。
◆耐震等級とレベル
耐震等級とは、地震に対しての建物の強さを表す指標の1つです。2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で定められた「住宅性能表示制度」に基づく評価基準で審査され、地震による建物の倒壊、崩壊のしにくさによってランクが3つに分かれています。数字が大きいほど耐震性能が高くなります。
◎耐震等級1:建築基準法が定める最低限の基準
建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たしている建物です。具体的には、数百年に1度の震度6~7に相当する地震に対しても倒壊、崩壊しない設計、震度5程度で住宅が損傷しない程度に設計されています。
ただし、即倒壊はしないものの、その後は大規模修繕や建て替えが必要となる可能性があります。
◎耐震等級2:公共施設や長期優良住宅の認定基準
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震に耐えられる性能、耐震強度のある等級です。
震度6強から7の地震でも即倒壊はせず、その後も一定の補修をすることで住み続けられる程度の損傷で済むと考えられています。
避難所となる公共施設、学校、病院、警察署などは耐震等級2以上であることが必須とされています。一般住宅の「長期優良住宅」も、耐震等級2以上が条件です。
◎耐震等級3:耐震等級の中で最も高いレベルで熊本地震では倒壊ゼロ
等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられるだけの性能・耐震強度水準の等級です。耐震等級の中で最も高いレベルであり、震度6~7の大地震が起きてもほとんどダメージを受けないとされています。
2016年に起きた震度7の熊本地震では、耐震等級3の木造住宅の倒壊はゼロで、80%以上の建物が、無被害という結果でした。
◆耐震等級3のメリット・デメリットと決め方のポイント
【耐震等級3のメリット】
◎大きな地震に遭ってもダメージが少なくてすむ
耐震等級3の家は、耐震等級1や2の家と比較すると、地震によって受けるダメージが小さくなるのがもっとも大きなメリットです。大地震の際に損傷が小さくてすむことで、そのまま住み続けられる可能性が高くなり、資産としても維持しやすくなります。災害時に避難生活を送るリスクを減らせることは、家族の不安を軽減し、メンタルの安定にもつながるでしょう。
◎住宅ローンの金利優遇を受けられる
住宅ローンを提供している金融機関のなかには、耐震等級3の家に対して金利を優遇する会社も少なくありません。低い金利で住宅ローンを借りられるのも、耐震等級3で家を建てるメリットです。
◎地震保険の割引率が大きくなる
地震保険は耐震等級に応じて割引が受けられます。割引率は耐震等級1だと10%、等級2では30%ですが、等級3だと50%と大きくなるのが特徴です。
◎売却時に高く売れる可能性がある
耐震等級3の認定を受けた家は耐震性の高さが証明されているため、資産価値が高く評価され、売却時に高く売れやすくなります。
【耐震等級3のデメリット】
◎建築コストが高くなる
耐震等級のレベルが高くなると、建築材料費はもちろん、設計・施工の手間と時間がかかることにより人件費も高くなります。また、耐震等級2以上にする場合は、必ず構造計算が必要となり、そのための費用もかかります。耐震等級3と認定されるには第三者評価機関による調査が必要になるため、設計や工事にかかる期間が長くなる傾向があります。
◎希望の広さや間取りにできない場合がある
耐震等級3の家を建てるためには、間取りの制約を受けることがあり、希望の間取りを実現できない場合があります。
また、耐震等級3にすると建築コストが高くなるため、予算面で希望の広さにできないこともあります。例えば、耐震等級1であれば30坪の家を建てられる予算でも、坪単価(1坪当たりの単価)が高くなることにより25坪の広さにしかできない、といったこともあるのです。
◎依頼の段階でリクエストする必要がある
耐震等級3の家にするためには、それを前提に設計を進めなければなりません。耐震等級3にすることを考えている場合には、できるだけ早い時点で相談しましょう。
耐震等級3の家は確かに耐震性が高くなるので、精神的には大きな安心を得られます。しかし耐震等級3の認定を受けるためには、時間もコストもかかるのが事実です。
耐震等級3にするメリット・デメリットを比較検討したうえで、必要かどうかを決めましょう。