長期優良住宅の認定を受けると様々な優遇措置を受けられますが、きちんと理解しないまま手続きを進めてしまうと、後々後悔する方がいるのも事実です。
この記事では、長期優良住宅の制度やメリット・デメリットなどを解説しますので、長期優良住宅を検討している方は参考にしてみてください。
◆長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の基準を満たした住宅です。
長期に渡って安心して快適に住み続けられることができる住宅で、建物の着工前に都道府県知事等に申請を行い、一定の基準に適合していれば、長期優良住宅の認定を受けられます。なお、完成後の建物検査はなく、書類審査のみで認定されます。
◆長期優良住宅のメリット
【メリット1】各種税金の優遇が受けられる
長期優良住宅の認定を受けると、下記のような税制優遇を受けられ、お得に家を建てられます。
- 所得税・住民税
住宅ローンを利用してマイホームを購入し、2025年末までに入居の場合、条件を満たすことで所得税と住民税の控除が受けられます。
- 登録免許税
建物完成後の保存登記にかかる登録免許税が0.15%から0.1%に引き下げられます。
- 不動産取得税
不動産取得税の控除額が1,200万円から1,300万円に増額されます。
- 固定資産税
戸建住宅の場合は、固定資産税の減税措置(1/2減額)の適用期間が3年間から5年間に延長されます。
【メリット2】住宅ローン金利や保険料の割引がある
- 住宅ローン金利
民間金融機関と住宅金融支援機構の提携による住宅ローン「フラット35」の金利優遇があります。
- 地震保険料
耐震等級2以上で高い耐震性をクリアしているため、地震保険料が割引されます。
耐震等級2で30%割引、耐震等級3で50%割引など、耐震等級に応じた割引率が適用されます。なお、地震保険のみ加入することはできず、火災保険にも加入することが必須となります。
【メリット3】補助金を受けられる可能性がある
国土交通省の採択を受けた中小工務店で木造の長期優良住宅を新築する際は、「地域型住宅グリーン化事業(長寿命型)」による補助金を受けられる可能性があります。補助金額は一戸あたり最大110万円で、地域材を利用することによる加算金などもあります。なお、ハウスメーカーでの建築は対象となりません。
【メリット4】断熱性能が良く快適な居住空間が得られる
長期優良住宅には高い断熱性能が求められます。具体的には「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」ですが、これはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の基準と同等です。
この高い断熱性能によりエネルギー使用量が抑えられ、家計の光熱費が削減できるため、経済的な恩恵も期待できます。
また、部屋間の温度差が少なくなり、家の中が均一に暖まりやすくなるので、冬場のヒートショックによる心筋梗塞などの健康被害のリスクを軽減できます。
【メリット5】大地震でも建物の損壊を抑えられる
長期優良住宅の認定を受けるためには、「耐震等級2以上」の強度が必要です。耐震等級2の建物は震度6〜7の地震にも耐えられる耐震性があり、その後も一部の補修を行えば生活できる可能性が高くなります
【メリット6】メンテナンスコストを抑えられる
長期優良住宅は30年以上住み続けることを想定しているため、少なくとも10年に一度の点検が義務付けられます。使用する材料や工法、設備の仕様も長期間の仕様に耐えられるように設計されています。
せっかく注文住宅を建てても、初期コストを気にして耐久性が低い部材を選んだ結果、劣化による修繕費用がかかるという方も少なくありませんが、長期優良住宅であれば将来の修繕費用を抑えられると言えます。
【メリット7】売却するときに付加価値となる
国の認定制度である長期優良住宅は、高性能な家であることを客観的に示すことができます。事情があってマイホームを売却することになった場合に、長期優良住宅は大きなアピールポイントとなります。長期優良住宅に関する認定書類はしっかりと保管しておきましょう。
◆長期優良住宅のデメリット
何かと魅力的な長期優良住宅ですが、デメリットもあります。
【デメリット1】建築コストが高くなる場合がある
長期優良住宅の認定基準をクリアする住宅を建てる場合、一般住宅よりも建築コストが割高になる傾向があります。ただし、大手ハウスメーカーなどは、標準仕様で長期優良住宅の認定基準をクリアしていることも多いので、長期優良住宅にしても建築コストはあまり変わりません。
【デメリット2】建築期間が長くなる場合がある
長期優良住宅を建てるためには、申請書類の作成や手続きが必要なため、着工までに通常1ヵ月程度時間がかかります。場合によっては工期も長くなることも。長期優良住宅の認定を受ける場合の建築期間を事前に確認しておくと安心です。
【デメリット3】申請コストがかかる
長期優良住宅の認定を受けるためには費用がかかります。自分で申請する場合は、おおよそ5〜6万円、ハウスメーカーや工務店に代行してもらう場合は、20〜30万円程度かかります。
【デメリット4】定期点検が必要
長期優良住宅は、建てた後も継続的な点検やメンテナンスを行い、良好な状態を保つ必要があります。建築前に提出する「維持保全計画」に沿って定期点検を行い、必要に応じて修繕を実施します。計画通りに維持保全を実施しないと、長期優良住宅の認定を取り消される場合があるので注意が必要です。
◆まとめ
税金や保険料の優遇や高い耐震・断熱性能など、魅力が多い長期優良住宅ですが、建築コストや将来の維持管理コストにおけるデメリットもあります。
メリット・デメリットをよく理解した上で、自分たちにとって必要かどうかを慎重に判断しましょう。