家づくりで欠かせない断熱対策。暑い夏や寒い冬でも快適に過ごせるように、グラスウールやウレタンフォームなどさまざまな断熱材が外壁や床下に用いられます。
住宅会社ではそれぞれ標準仕様の断熱材が決められているため、一から決める必要はありません。しかしどんな断熱材があって、それぞれどのような特徴をもつ素材なのかを知っておけば、家づくりに役立つでしょう。今回は標準仕様の内容や、断熱材の選び方を解説したいと思います。
標準仕様の断熱材とは?
標準仕様の断熱材とは「断熱材は発泡スチロール系を使います」「施工箇所は外壁や床下です」といったような基準内容のこと。工務店やハウスメーカーでは「どこに・どんな断熱材を・どのくらい使用するか?」があらかじめ決められているのです。この標準仕様の内容を詳しく見てみましょう。
標準仕様の内容①使われている場所
断熱材は、外気の影響を受けたくない場所に使われます。
必ずといっていいほど使われている場所は以下の通りです。
・外壁
・屋根裏
・1階床下
・ベランダ下
・お風呂の基礎部分
・土間床周囲
これらの場所に断熱材を施工することで、暑い夏も寒い冬も快適に過ごせるようになります。
施工場所が少ないと熱が逃げやすい家になってしまうので、しっかり断熱できるか確認しましょう。
標準仕様の内容②使用する断熱材の種類
多くの住宅で用いられている断熱材は「発泡プラスチック系・無機繊維系・木質繊維系」の大きく分けて3種類。「湿気には強いが熱には弱い」「燃えても有害ガスはでない」など、それぞれ性能は違います。
1種類の断熱材のみで家全体を覆うこともあれば、施工箇所によって複数の素材を使うこともあります。どの断熱材を使うかで断熱性能や家の寿命も左右されるため、素材にはこだわりたいところです。
標準仕様の内容③どのくらい使われるか
同じ素材でできた断熱材でも、「密度(単位:K)」と「厚さ(単位:mm)」によって断熱性能は変わります。
密度の数値は1㎥あたりの質量を示しており、14Kなら14kg、26Kなら26kgです。同じ素材であれば、密度が高いほど断熱性能もアップします。
断熱性を高めるには、断熱材も厚さも大切です。厚さがあるほど断熱性は高いため、密度と厚みの数値をセットで確認してみましょう。
標準仕様の内容④施工方法
断熱材の施工方法は大きくわけて「内断熱」と「外断熱」があります。内断熱は「構造物よりも内側に断熱材を入れる」方法。外断熱は「構造物よりも外側に断熱材を入れる」ため、家をすっぽり断熱材で覆う状態になります。
断熱性と気密性を高められるのは外断熱ですが、内断熱に比べるとコストアップしてしまいます。日本の気候だと内断熱でも十分快適に暮らしていけるため、多くの施工会社では内断熱を標準仕様にしています。
断熱材の選び方
標準仕様は施工会社によって異なるものの、どの断熱材がいいのかわからない方が多いことでしょう。
ここでは、断熱材選びのポイントを紹介します。
熱伝導率が低い素材を選ぶ
熱伝導率とは熱の伝わりにくさを表した指標で、値が小さいほど断熱性が高いことを示しています。代表的な断熱材の熱伝導率を以下にまとめました。
発泡プラスチック系 |
熱伝導率 W/(m・k) |
高性能フェノールフォーム |
0.019 |
ビーズ法ポリスチレンフォーム(4号) |
0.043 |
吹付け硬質ウレタンフォーム(A種3) |
0.036 |
硬質ウレタンフォーム(2種1号) |
0.023 |
押出法ポリスチレンフォーム(3種) |
0.028 |
MSフォーム |
0.037 |
無機繊維系 |
熱伝導率 W/(m・k) |
グラスウール16K |
0.045 |
グラスウール24K |
0.038 |
ロックウール |
0.038 |
木質繊維系 |
熱伝導率 W/(m・k) |
セルロースファイバー |
0.040 |
数値と価格について施工される建築会社と相談し、断熱性能の高い物を選ぶことで、冷暖房にかかるランニングコストを減らすことができます。
湿気に強い素材を選ぶ
熱伝導率の数値はあくまでも判断材料のひとつ。湿気を吸収したり水に濡れたりすることで断熱材の性能は徐々に落ちてしまいます。効果を持続させるには、湿気に強い素材を選ぶのがポイントです。
発泡プラスチック系は原料がプラスチックのため、水や湿気にさらされても劣化しにくい特徴があります。グラスウールはよく使用される断熱材ですが、水に濡れると断熱機能が低下するため、結露が起きないような対策が欠かせません。
隙間のできにくい断熱材を選ぶ
断熱材の効果を発揮するには、気密性を高めて隙間なく充填することが大切です。隙間なく断熱するには職人の技術も重要ですが、断熱材のタイプによっても施工のしやすさが変わってきます。
板状の断熱材は、住宅の形状に合わせてカットするため、ちょっとした隙間ができやすいのが難点です。一方吹き付けタイプの断熱材なら、複雑な形状でもぴったりと隙間なく充填することができます。
まとめ
断熱材の種類は多いため、一つひとつの性能まで把握するのは難しいですよね。施工会社では、どの断熱材をどこに使うか標準仕様で決められているので安心です。ただし施工会社で標準使用とされている断熱材が、予算やこだわりと合わない場合もあります。工務店やハウスメーカーを選ぶときは、標準仕様の断熱材の性能にも着目してみるとよいでしょう。